溶接加工とは?

溶接加工とは、2種類以上の金属に「熱」または「圧力」、必要によって「溶加材」を加えることで接合する金属加工方法のことです。
溶接加工のメリットは、2つの鋼板を繋げる際に材料の節約や端材を活用することが可能なので、経済的である点です。そのため、多くの分野で広く利用されている加工方法です。

日本溶接協会によると、“材料(被溶接材料)に応じて、接合部が連続性を持つように、熱又は圧力もしくはその両者を加え、さらに、必要があれば適当な溶加材(溶接材料)を加えて、部材を接合する方法”とあります。

溶接加工

溶接加工のメリット・デメリット

  • 溶接加工は、接合部に隙間が発生しにくいため、接合箇所の気密・水密性を高めることが可能です。
  • 溶接加工は製品の重量を増やさず接合することが可能なため、軽量であると言えます。
  • 溶接加工は、一度溶接すると解体が難しいというデメリットもあります。

溶接加工方法の分類

溶接加工法を分類すると60数種類にもおよびますが、大きく分けると、融接、圧接、ろう接の3つに分類することが可能です。

融接(溶融溶接)
とは?

特徴

  • 形状やサイズに関わらず加工しやすい。
  • 材料に適した加工方法を選択できる。
  • 接合部分で一定の強度が確保しやすい。
  • 板厚があっても溶接可能。
  • ひずみが起きやすい

溶接とは?

融接は、溶接の中でも最も一般的な加工法です。

溶接しようとする部分を加熱し、母材や溶加材を融合させて冷却とともに凝固させて接合します。母材を溶融させることでひとつのものにできるため、強度が優れているという特徴があります。

融接の中でも代表的な加工法としては、各種アーク溶接、レーザー溶接、などが挙げられます。

※機械的圧力を加えて接合することは基本的にありません。

圧接(加圧溶接)
とは?

特徴

  • 接合部分を美しく、仕上げることができる。
  • 大量生産が可能。
  • 薄板の接合が可能。
  • 気密性に不安あり。

圧接とは?

圧接は、金属の接合部分を摩擦や爆発によって加熱し、そこに機械的圧力を加えて接合する加工法です。別名「固相接合」ともいわれています。

接合部を機械的圧力で接合することで、数値制御が可能となり、全自動生産ラインやなどの大規模な生産現場でも用いられている点が最大の特徴です。

圧接の中でも代表的な加工法としては、ガス圧接、摩擦圧接、抵抗溶接、拡散接合、超音波圧接、爆発圧接などが挙げられます。また、自動車のボディの接合方法は「スポット溶接」と呼ばれる圧接方法が用いられているのも有名です。

ろう接
とは?

特徴

  • コストを抑え、大量生産が可能。
  • 異なる母材の接合が可能。
  • 母材を傷つけない。
  • DIYにも
  • 厚い母材だと強度に不安あり。

ろう接とは?

ろう接は、溶接する母材を溶融するのではなく、母材より融点が低い溶加材と呼ばれる「ろう」を接合面のすきまに接着剤のように行き渡らせて溶融接合する方法です。

異なる母材の接合が可能な点や、母材を傷つけないという特徴があります。

ろう接の中でも代表的な加工法としては、融点450℃以上の硬ろうを用いる「ろう付け」、融点450℃未満の軟ろうを用いる「はんだ付け」の2種類があります。「はんだ付け」は基盤作成などに用いられています。

代表的な溶接加工方法の紹介

融接加工

被覆アーク溶接(手棒溶接)【最もポピュラーな溶接方法】

被覆アーク溶接とは、古くから用いられている溶接方法で、手作業でおこなうのが主流ですので、「手棒溶接」とも呼ばれています。
母材と同じ材質の金属棒に、被覆材(フラックス)を塗り固めた溶接棒を電極として、この溶接棒と母材の間に形成されるアーク(※1)を利用して熱を発生させます。よく溶接工場をイメージして思い浮かぶ、火花を飛ばしながらバチバチッとやっているのが被覆アーク溶接です。

最大の特徴としては、芯線を覆っている被覆剤がアーク熱(※2)(5000℃~20000℃)で分解され発生するガスやスラグで溶融池を覆うため、アークが安定し、外部条件の影響を受けにくい点、さらには溶接金属を保護する効果も期待できまる点が挙げられます。

POINT:建設現場などの屋外での作業にも対応可能

※1、アーク…2つの電極間(+とー)で放電することによって発生するプラズマの一種で、気体中の放電現象に伴って発生する熱

※2、アーク熱…電位差の発生により、電極間にある気体に持続的に発生する絶縁破壊(放電)

TIG溶接(ティグヨウセツ)【アルミ・ステンレスの加工+手作業】

TIG溶接とは、高性能・高品質、かつ美麗な仕上がりが得られるアーク溶接法の中の、不活性ガス溶接の一種で、英訳「Tungsten Inert Gas」の頭文字をとってTIG溶接と呼ばれています。
熱に強いタングステンを電極にして、その周囲から不活性ガスであるアルゴンガスを噴出させて、溶接部分を無酸素状態にして、不活性ガスの中で発生した「アーク熱」で母材を溶かして溶接します。この時、溶接部分が不活性ガスで覆われているため、スパッタと呼ばれる火花はほとんど発生しません。そのため接合面が非常に綺麗に仕上がります。また、金属の中で最も融点の高いタングステンを電極としているため、導電性を持つ金属ならばほぼ適用可能で、炭素鋼・ステンレス鋼・低合金鋼などの鉄系金属からニッケル合金・銅合金・アルミニウム合金・チタン合金・マグネシウム合金などの非鉄系金属まで、工業用で使用されるほとんどの金属の溶接が可能です。

POINT:手作業かつ、他の溶接方法では難しいとされるステンレスやアルミの母材の溶接にオススメ

主な採用例:オートバイの部品など見える部分や工芸品など

MIG溶接(ミグヨウセツ)【アルミ・ステンレスの加工+半自動】

MIG溶接は、アーク溶接法の中の、不活性ガス溶接の一種で、電極に使用する針金状の溶接ワイヤーが自動で出てくる半自動溶接です。TIG溶接と同様にシールドガスに不活性ガスのみを使いますが、ミグ溶接の場合、放電電極が溶ける消耗電極式の溶接法です。溶接ワイヤーが電動モータで駆動する送給ローラーで自動的に母材に送り込まれ、棒の先端(ワイヤ)と母材との間にアーク熱が発生し、そのまま溶融して溶接する方式です。溶接材は自動的に供給されますが、人の手で溶接を行うので半自動溶接と呼ばれています。シールドガスによって大気と遮断された状態で溶接作業が行われるため、空気中の酸素の影響を受けずに溶接を行うことができます。このとき、アークや溶融地の周辺を大気からシールドするシールドガスは、ノズルで溶接部周辺に供給されます。(※3)

鉄系材料のほか、アルミ、銅、チタンなどの非鉄金属及びステンレスなどの材料も溶接が可能です。溶接する素材によってシールドガスを使い分けます

MIG溶接の中でも、ショートアークMIG溶接法、スプレーMIG溶接法、大電流MIG溶接法、パルスMIG溶接法など種類があります。

POINT:半自動溶接で、主にアルミやステンレスなどの非鉄金属の溶接に使用されます

※3、シールドガスって?
溶接を行うなかで金属と大気が触れると、金属の中に窒素や水素などが溶け込みます。すると、気泡が入り込んだり、金属の中に水素が吸収されたりすることで脆くなり、強度が大きく低下します。それを防ぐためにアルゴンや二酸化炭素をシールドガスとして噴出しながら溶接を行う必要があるのです。

マグ溶接【鉄・軟鋼・高張力鋼の加工】

マグ溶接はMIG溶接の鉄を溶接できないデメリットを補うため、ミグ溶接と同じ半自動溶接で、不活性ガスであるアルゴンを主体に二酸化炭素(炭酸ガス)を混合したガスを噴出しながら溶接材としてワイヤ-を使用します。最も一般的な比率は炭酸ガス20%+不活性ガス80%です。二つのガスを混合することで、MIG溶接と同様の美しい仕上がりに加え、炭酸ガスの化学反応による溶け込みの深い強度が可能になりました。マグ溶接は、炭酸ガスを使用するため主に炭酸ガスアーク溶接と同様に鋼鉄の溶接に向いています。例外的に、フェライト系やオーステナイト系のステンレスは、不活性ガスのみを使用するミグ溶接では十分な強度の溶接が出来ないため、強度や仕上がりの見た目などを考慮し、マグ溶接を用いることもあります。ただし、炭酸ガスが化学反応を起こすため、アルミなどの非鉄金属には向きません。

POINT:マグ溶接が向いている材料

  • 軟鋼
  • 高張力鋼

圧接

スポット溶接【コストダウンにも対応】

スポット溶接とは、金属の電力抵抗を利用した溶接法で、溶接材同士を重ね合わせたところにチップと呼ばれる金属板(電極)を挟み、加圧し、電極間を通電させ、その際に発生した電気抵抗で発生した熱を使って2つの母材を溶融接合させる圧接法です。通電によって瞬時に熱を発生させるため、作業効率が非常に良く自動車の製造ラインの接合工程などで幅広く使用されています。また、溶接点を連続的に繋げるシーム溶接や、突起部を集中的に発熱させて一部分を接合させるプロジェクション溶接もスポット溶接の一種です。

POINT:ニッケルやステンレスなどの電気伝導率と熱伝導が均等な金属母材の加工に適しています。

ろう接

ろう付け(ロウ付け)

ろう付けは、「ろう接」の一種で、母材と溶加材の融点の違いによるぬれ現象(※1)を利用した溶接法です。接合する2つの母材の間に、融点が母材より低い「ろう」(※2)を溶かして落とし、母材を溶かさずに溶加材のみを溶かし、毛細管現象によって浸透拡散させ、冷却して凝固することによって接合する方法です。母材自体を溶融させずにろう材のみを溶かし、一種の接着剤として用いて接合させるので、母材を傷めずに接合することが可能です。同じ金属同士、さらには異なった金属同士の接合も可能です。また強い熱によって溶ける「ろう」は金属同士が固着後に強く接合され、接合強度ははんだを上回ります

※1、ぬれ現象:溶加材が接着面に行き渡る現象

※2、ろうの液体になる融点(温度):450℃以上で液相

はんだ付け

はんだ付けもろう付けと同様「ろう接」の一種で、母材と溶加材の融点の違いによるぬれ現象を利用した溶接法です。ろう付けとの違いは溶接材を加熱した際の液体になる融点(溶融温度)(※1)の違いです。

※1、はんだの液体になる融点(温度):450℃以下で液相

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