ねじの強度区分とは?
ねじの強度を示すのが【ねじの強度区分】といわれる指標です。鋼製ボルト、小ねじの強度についてはJISに規格があります。
鉄製ねじの主な強度区分とは
鉄製のボルトでは主に〇.〇と表記されます。左の数値は引っ張り強さを示していて、右の数値は降伏点を示しています。
- 引張強さとは?
- 材料が破断するまでの最大荷重(N)を断面積(mm²)で割った値のこと
- 降伏点とは?
- 材料に荷重をかけていき、あるところまでは元に戻るが、ある点を超えると伸びきったまま元に戻らなくなる。その点のことを降伏点と呼びます
鉄製ねじの主な強度区分一覧表
強度 区分 | 説明 | 主な製品 | 対応するナットの 強度区分 |
4.8 | 400N/㎜²(約40キロ/mm²)の引張強さがあり、 その80%の320N/mm²以上の荷重がかかると伸びてしまい、元には戻らない | 一般ボルト 一般小ねじ | 4(4T) |
8.8 | 800N/㎜²(約80キロ/mm²)の引張強さがあり、 その80%の640N/mm²以上の荷重がかかると伸びてしまい、元には戻らない | 高強度ボルト | 8(8T) |
10.9 | 1000N/㎜²(約100キロ/mm²)の引張強さがあり、 その90%の900N/mm²以上の荷重がかかると伸びてしまい、元には戻らない | 高強度ボルト | 10(10T) |
12.9 | 1200N/㎜²(約120キロ/mm²)の引張強さがあり、 その90%の1080N/mm²以上の荷重がかかると伸びてしまい、元には戻らない | 高強度ボルト 六角穴付きボルト | 12(12T) |
高強度のボルトを使用する際は、その強度区分に対応したナットを使用することが安全な締結の
為に重要になります。
ステンレス製ねじの強度区分とは
ステンレス製のねじの強度区分は〇〇ー〇〇(例A2-70)と表します。左側の部分は鋼種区分を表し、右側は強度区分を表します。鋼種区分は英字一文字と数字の組み合わせで鋼種を特定します。(表1)強度区分は引張強さの1/10の2桁の数字で表されます。(表2)(JISB1054-1より)
例えば、A2-70の場合は、表2から鋼種区分A2の強度区分70(引張強さ700N/mm²)の冷間加工品となります。さらに、表1より鋼種A2というのは代表的な鋼種ではSUS304やSUSXM7ということが分かります。
表1:ステンレス鋼種区分
鋼種分類 | 鋼種区分 | 代表的な鋼種名 |
---|---|---|
オーステナイト系 | A1 | SUS303 |
A2 | SUS304、SUSXM7 | |
A3 | SUS321、SUS347 | |
A4 | SUS316、SUS316L | |
A5 | SUS316N、SUS316LN | |
マルテンサイト系 | C1 | SUS403、SUS410 |
C3 | SUS431 | |
C4 | SUS416 | |
フェライト系 | F1 | SUS430 |
表2:ステンレス強度区分
ステンレス製ねじの強度区分一覧表
鋼種分類 | 鋼種区分 | 強度区分 | 引張強さ Rm 最小MPa | 永久伸び 0.2%耐力 Rpo.2 最小MPa | 破断後の伸び A 最小mm |
---|---|---|---|---|---|
オーステナイト系 | A1 A2 A3 A4 A5 | 50 70 80 | 500 700 800 | 210 450 600 | 0.6d 0.4d 0.3d |
鋼種分類 | 鋼種 区分 | 強 度 区 分 | 引張強さ Rm 最小MPa | 永久伸び 0.2%耐力 Rpo.2 最小MPa | 破断後の伸び A 最小mm | 硬さ HBW | 硬さ HRC | 硬さ HV |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
マルテンサイト系 | C1 | 50 70 110 | 500 700 1100 | 210 410 820 | 0.2d 0.2d 0.2d | 147-209 209-314 – | – 16-34 36-45 | 155-220 220-330 350-440 |
マルテンサイト系 | C3 | 80 | 800 | 640 | 0.2d | 228-323 | 21-35 | 240-340 |
マルテンサイト系 | C4 | 50 70 | 500 700 | 250 410 | 0.2d 0.2d | 147-209 209-314 | – 16-34 | 155-220 220-330 |
フェライト系 | F1 | 45 60 | 450 600 | 250 410 | 0.2d 0.2d | 128-209 171-271 | – – | 135-220 180-285 |
強度区分Q&A
- SCM435とはなにか?
- SCM435とは大分類では機械構造合金鋼になります。中分類では、JIS規格G4105のモリブデン鋼です。
S:Steel(鉄)
C:Cr(クロム)
M:Mo(モリブデン)
4:合金元素量コード
35:C量(炭素量×1/100WT%)
この材料は戦争中に銃弾から頭を守るためのヘルメット用に開発されたものです。「強靭鋼」とも呼ばれています。鋼材のまま使用されることはほとんどなく最終的には、焼き入れ・焼き戻しの熱処理を行います。強くて粘りのある信頼性の高い材料で、自動車の重要部に多く使用されています。
【ねじの使用例】六角穴付ボルト、調質ボルトなど
- ネジは締め付けるとなぜ緩まないの?
- ねじが緩まない理由は、伸びたねじが縮もうとするからです。
ネジは締め付けると目視ではわかりませんが、ほんの少しだけ伸びているのです。その伸ばされたねじが縮もうとする力によって、ネジ山のはめあいに摩擦力が発生してねじは緩まないのです。ネジを伸ばそうとする力にどのくらい耐えられるかを表すのが上記票で説明した「12.9」などの強度区分です。
12.9 → 約120キロまで切れずに9割の約108キロまで元に戻る
10.8 → 約100キロまで切れずに9割の約90キロまで元に戻る
8.8 → 約80キロまで切れずに8割の約64キロまで元に戻る
(力の単位:mmあたり)